現在当店1F THE BRISK VINTAGE GALLERYにてHaute couture collectionを開催しておりますが、今回はモード界において伝説と呼ばれたクチュリエ "Madame Gres(マダム・グレ)"に着目していきたいと思います。
1934年に"アリックス"という名でメゾンを開き、42年に"グレ”と改名。
元々は彫刻家を目指していたが、家族からの猛反対を経てファッションの道へ。
"布の彫刻家"
"ドレープの魔術師"
と称され、その功績が讃えられ2度もレジオン・ド・ヌール勲章を受勲しています。
後にパリ・オートクチュール協会の名誉会長をも務め、今でもなお語り継がれる存在となっています。
今回奇跡的に買い付けられたこちらの1960年代オートクチュール。
眩く光る生地の美しさもさることながら、ボタンにひとつひとつ穴をあけ、そこへビニール素材のような装飾を施していて、気の遠くなるような技術が盛り込まれています。
機械を使わず極力"手"でやりたいという思いが伝わってきますね。
グレの残した言葉で
「そんなに手間がかかるならいっそ、機械を使えばという意見もあるがとんでもない話。
だいたい機械が発明されてから、人間は進歩したかわりに、心を失ってしまった。これはなにもクチュールの世界だけでなく、20世紀の大きな問題だ。」
これを目にした時、昔も今も思うことは似ているものなのだなと痛感します。
どんどん便利になっていくこの時代。もちろん恩恵を受けることも多くありますが、何事も"行き過ぎ"はどの時代においてもいいことではないのかもしれません。
人それぞれ価値観は違うもので正解というものがないからこそ、自分の信念は大切にしたいものです。
グレは服を仕立てる際、最も重きをおいているのが "カット"
一枚の布の性格を見極め、布自身が欲している流れを察知しそれを与える。
コレクション準備中にはハサミを3丁使い切ってしまうそう。
本人自身は”私生活”というものが存在するのかというほど、全て仕事で埋め尽くされています。
共に働いている人たちも同じなので、その人達のことを思うと自分の厳しさにゾッとするとまで言っています。
私がグレのことを知った際に一番好きだったエピソードが、
1970年にソビエトで行われたコレクションを通して自身の幸せをこのように語っていたことです。
「1970年、ソビエトに行った時だった。政府に招かれたのだが、一般の人たちにもコレクションを見せるということで承諾した。西欧の国の服を通しての美しさを私は見せたかった。
一般の人たちの会場は運動競技場でゴツい手をした、日焼けした農民の人たちが多かった。モスクワまで飛行機や汽車に乗ってやってきた人々は、モードとは直接なんの関係もない。それなのに彼らは、コレクションを見て泣いていた。
美しいものには政治も思想もないという私の信念は、あの日はっきり証明されたし、私をとても幸せにさせてくれた。
美しいものを創って、そのことで役立ちたいと決意したあの子供の時の夢が叶えられたから。」
自分が思う美しさ(信念)を大切にし、それをかたちにして人々へ人生観を変えるほどの感動、衝撃を与える。
服というものはこれだけの大きな力があるのだと、改めて思い知らされました。
ドレスから放たれる美しさはもちろんですが、グレの女性としての強さも一緒に感じ取ってもらえたら嬉しく思います。
The Vintage Dress.
Comments